【キーワード対策】スマートシティ

背景

 現在、我が国の都市行政においては、社会経済情勢の変化に伴い、人口減少・超高齢社会厳しい財政制約等の諸課題が顕在化する中、住民生活を支える様々なサービス機能が確保された持続可能な都市構造を実現するため、誘導手段の導入・活用等によりコンパクト・プラス・ネットワークのまちづくりを推進している。

 また、近年、IoT(Internet of Things)、ロボット人工知能(AI)ビッグデータといった社会の在り方に影響を及ぼす新たな技術の開発が進んでいる。我が国でも、これらの先端技術を産業や社会生活の様々な場面で活用する取組みが進められており、経済発展と社会的課題の解決を両立していく新たな社会「Society 5.0」(超スマート社会)が、第5期科学技術基本計画(2016~2020年度)において我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されるなど、今後、イノベーションの進展による経済社会構造の大きな変革は世界的な潮流として進んでいくと考えられる。

※引用:スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】国土交通省

スマートシティとは

 スマートシティとは、「都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・整備・管理・運用)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義される。(国土交通省)

 スマートシティでは、ICT等の新技術の活用により、各個人の活動、さらには、各企業・団体の活動のベクトルを揃え、効果的かつ効率的な産業の創造・育成エネルギー利用、治安維持、子供や高齢者の見守り、交通渋滞の解消災害対策等が実現される。

スマートシティの実現に必要な技術

通信ネットワーク技術とセンシング技術

 近年、移動体通信の分野では、超高速だけでなく多数接続や超低遅延といった強みを持つ次世代移動通信「5G」(第 5 世代移動通信システム)や、消費電力を抑え、通信容量の小さい大量接続に適した「LPWA(Low Power Wide Area)」など、利用シーンに応じた様々なネットワーク技術が研究・実装されている。

 こうしたネットワーク技術の高度化は、センサーの小型化・低廉化・高機能化・省電力化等を背景に、車や家電、産業用設備など、これまで通信機能を備えていなかった機器や、様々な日用品との交信をも可能とする。このように、モノとモノとが通信ネットワーク上で情報交換する「IoT」の普及は、調査・確認等の作業を省人化し、都市の課題解決に直接資することはもちろん、従来は取得が困難であった様々なデータの取得を可能とし、新たな課題の発見や解決策の検討にも役立つものと考えられる。

 また、日常的に活用されるまでに普及した情報通信端末(スマホなど)やネットワークインフラ自体も新たなデータ取得に利用されている。例えば、通信ネットワーク企業においては、他の企業や地方公共団体と協力し、携帯電話利用者の基地局単位の移動・滞在情報や各地に設置された Wi-Fi の利用情報などを、個人が特定されないよう統計データに加工し、まちづくり防災対策等の公共分野や出店計画・市場分析等のビジネス分野に活用していこうとする動きもある。

分析・予測技術

 近年、「ビッグデータ」と呼ばれる膨大かつ複雑な構造だが電子的に処理可能なデータが、高度化した通信ネットワークやセンサーネットワーク、既存の SNS・検索サイト等から比較的容易に入手できるようになっている。これらのデータは、それだけでは役に立たないが、コンピュータの処理能力向上や人工知能(AI)等の技術革新と相まって、様々な分野で高度な分析や予測を可能としており、まちづくり分野においても、大きな影響を与えるものと期待できる。

 膨大かつ複雑なデータ群を様々な分野で有効に活用するためには、それを同じフォーマットに落とし込み、相互に分析できるプラットフォームが必要となる。例えば、欧州では、公共サービスを提供する自治体や企業等の業種を越えたデータ利活用やサービス連携を促すため、様々な分野・領域のデータを一括管理・運用する「FIWARE」が開発・実装され、現在、日本を含む欧州以外の地域でも利用されている。

 AI については、「ビッグデータ」を用いることで AI 自身が知識を獲得する「機械学習」が実用化されている。その結果として、画像や動画から個々の属性(性別・年齢層等)を判別することやヒト・モノの動き等を解析・予測することが可能となる。まちづくりの分野でも、利用者数や人流を考慮した施設整備老朽施設のメンテナンス効率化渋滞予測による信号の切り替え等、様々な場面での活用が考えられる。

データの可視化技術

 これまでの調査・設計・施工段階では、図面を元に関係者間で話し合いを行うことが多く、実際の建築物がどのような形になるのか分かりづらいため、人によってプロジェクトの理解度に差が出ることも少なくなかった。こうした問題に対処するために、BIM/CIMといった構造・設備・コスト等に関する情報を一元管理し、それを活用した3次元化映像を元に意思決定を行い、業務プロセスの改善につなげる取組みが推進されている。

 さらに、データ可視化の取組みは建設現場に限ったことではなく、まちづくりのあらゆる場面でも求められる。特に複雑なデータを解析した結果を分かりやすく伝えるためには、視覚的・感覚的に理解しやすい説明を行うことが望ましい。こうした需要に対応し、都市構造を様々な統計データから可視化するツール(i-都市再生)VRによる映像化を通じて、都市政策や開発の必要性にかかる合意形成を図る取組みが行われている。

上記を活用した新たな応用技術

 いままで人間による制御を必要としていた機械が、特に通信ネットワークと AI の発展により、自律的に行動できる範囲が増えている。それは単に省人化という範囲に留まるものではなく、危険を伴う仕事を代替したり、時には人間自身が行うよりも、サービスを高度化することも考えられる。そして、こうした応用技術の実用化に成功すれば、現在の都市の課題の一部を一気に解決できる可能性もある。

 その代表例は、モビリティ分野における「自動運転」である。現在、2020 年までに特定条件下における完全自動運転(レベル4)という政府目標の実現に向けて、官民問わず様々な実証実験が実施されている。まだ実現には時間がかかるものと考えられているが、限定条件なしの完全自動運転化(レベル5)が実現すれば、都市部における交通事故の激減・交通混雑の緩和地方部における交通弱者の移動手段の確保、また、物流サービス等における運転手不足の緩和など、ヒトやモノの移動に関連する課題を解決できる可能性がある。

 また、「無人航空機(ドローン)」もその高度化により、活用範囲を拡大している。GPS 情報・電子コンパス・加速度センサー等を活用することにより、予め飛行経路等を設定することで、操縦者の目視下になくても、自律的に飛行することが可能となった。その結果として、地方部での配送サービス災害時における現場確認・平時における警備・監視など、様々な分野への利用を可能にするための実証実験が実施されている。
 加えて、ロボットに人間による作業を代替させることを実現するための取組みも広く行われている。例えば、建設現場では、資材搬送・鉄骨柱の溶接等をロボットに行わせ、省人化・高品質化を実現しようとする実証実験が行われている。また、都市サービスにおいても、特定エリアの警備・店舗案内・清掃をロボットに担わせることで省人化を図る実証実験が行われている。これらの実証実験の結果や更なる技術革新により、まちづくりにおいても、現在人間により提供されているサービスが、ロボットによって提供されるかもしれない。

※引用:スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】国土交通省

スマートシティによる効果

生活者の視点

①生活の質を高める余剰時間

 スマートシティが実現した社会では、ICT 技術の進展により、生活者は物理的な距離を越えて、リアルタイムに情報の収集と共有が出来るようになる。これにより、生活者は、物理的な距離や時間的な制約から解き放たれることになる。このことは、例えば生活者の時間の使い方に影響を与え、一人一人にとって有限な時間を、最適かつより自由に使うことを可能とする。従来、安全・安心、かつ最低限な暮らしを維持するために割かれていた、通勤や買物、通院等の基本的な欲求を満たすための時間を、自己実現のための社会貢献や再教育、人的交流、体験等、より高次な欲求を満たすための創造的な活動や、余暇の活動に費やせるようになり、個人の生活の質(QOL:Qualityof Life)を高められると考えられる。

②経験の充実を図る場所としての都市

 生活者はスマートシティが実現した社会で新たに生まれた余剰の時間を、データでは代替できない、実際の都市で様々なヒト・モノ・コトに出会うための経験的な活動に充てると考えられる。それは、生活者が自己実現欲求を充たすための「人に出会い、交流の中で啓発を受けること」「希有な物品の展示を見に行き、感動すること」「共通の目的や趣味をもつコミュニティの活動に参加し、現場でモチベーションを共有すること」等の経験的な活動である。これら、その場所に居ることでしか得られない対面接触の経験は、生活者にとって重要な価値をもつことになる。

 これからの都市では、このような対面接触による、より多くの経験的な活動を求めて、生活者が都市のなかを移動するシナリオを想定することができる。そこでは、MaaS(Mobility as a Service)のようなスマートシティのアプリケーションが、生活者の経験的な活動を充実させるため、鉄道からタクシー、カーシェアサイクルシェア等まで、多様な交通機関をシームレスに繋ぎ、生活者がひとつの活動から次の活動へと、都市を快適にナビゲートするための補完的な役割をもつ。このように情報ネットワークを掛け合わせた交通ネットワークの発達が、より望ましい目的地へのアクセス能力を高めることで、都市における新たな交通需要も誘発される。

都市の管理者・運営者の視点

①静的データ利用から動的データ利用へ

 従来は、都市活動や課題に対し、5 年に一度や 10 年に一度実施される統計データ(静的データ)に基づく分析、時点の比較に基づく予測といったものが中心であったが、IoTWi-FiGPS 等により収集されるビッグデータを活用することで、日・時・分・秒単位のリアルタイムなデータ(動的データ)が取得され、そのデータに基づく判断が可能となり、それらを基にした確度の高い将来の予測等の実施により、従来要していたコスト(人件費等)の削減等、インフラの適正管理等に資することができる。また、得られる良質で判断可能なデータについては、社会全体で取得・蓄積することで、多方面への活用が期待される。さらには、こうしたデータについては、平時のみならず、災害時や復旧・復興等での活用も期待できる。

②マクロの視点からミクロの視点へ

 従来は、都市活動や課題に対し、大まかな地域やメッシュ単位(マクロ)のヒト・モノ・コトの状況に基づく分析や判断が中心であったが、地域やメッシュの中のピンポイント(ミクロ)なヒト・モノ・コトの状況に基づく分析や判断が可能となり、適切な場所への施設配置、身の丈にあった規模の施設整備等に資することができる。

③エピソードベースからエビデンスベースへ

 従来は、たまたま見聞きした事例や限られた経験等を基に判断(エピソードベース)されることが多かったが、変化が生じた要因についての事実関係をデータで収集し、どのような要因が変化をもたらしたかについて、シミュレーションを行うこと等により、定量的かつ客観的なデータに基づいた判断(エビデンスベース)や多様なデータを活用した多角的な検証による施策立案も可能となる。その結果、まちづくりに対する住民の関心が高まり円滑な合意形成等に資することになる。

④分野個別の解から分野横断の解へ

 従来は、個別主体が持つデータは、個別分野における利用に留まっており、データの価値が最大化されていなかったが、多様な主体がデータを共有化し、掛け合わせることで、一つのデータが分野を超えて応用・最大化されることで、分野横断的な解決が可能となり、持続可能な都市サービスの提供等に資することができる。

※引用:スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】国土交通省

スマートシティの懸案事項

インフラ整備のコストが予測不能

 電車やバス、タクシーなどの交通機関、電気・ガス・水道などの公益事業など、あらゆるインフラを整えると多額のコストが必要となる。また、施設や仕組みを導入するコストだけでなく、運用やメンテナンスにかかるコストまでを考慮しなくてはならないため、構築までに長い時間がかかることが予想されるが、その一部を住民が負担することになる。

監視社会への懸念

 インフラやサービスだけでなく、各個人の健康状態、位置情報の履歴など、あらゆる行動が可視化されるため、個人情報が監視・蓄積され、情報が全て筒抜けになってしまう恐れがある。

デバイスやシステムの故障やトラブル

 様々なインフラがIoTとしてネットワーク上に接続された状態を実現するには複雑なシステムや仕組みを構築する必要がある。しかし、システムが複雑になればなるほど、トラブルや故障が生じやすくなり、万が一、広大な団地一角全体でシステムトラブルが発生すると、大規模なトラブルに発展する可能性が高まり、復旧までに時間を要することも考えられる。

ハッキングなどのセキュリティ問題

 現在においても、海外ではハッカーが地方自治体のダムシステム管理センターに侵入したり、高速道路を走行するコネクテッドカーの操縦ができなくなったり、家電機器の動きをストップさせたりするといった被害がある。IoTや5Gの通信網であらゆるモノ・コト・情報がつながれば人々の生活はより利便性を増すが、それに伴いサイバー攻撃への影響、ハッキングされた際のリスクが上がることになる。

データプラットフォーマーによるデータの寡占・独占

 スマートシティの実現は日々のあらゆるデータを取得するため、情報量や交渉力で強い立場にあるIT企業が個人のデータを吸い上げてしまうと、他の企業が新規参入しづらくなり、大手ばかりに収益が集中することになる。世界規模で寡占・独占が進むと、企業間の健在な競争を阻害することになり、様々な問題が生じてしまう恐れがある。

まとめ

 スマートシティの実現は、あらゆる社会的課題に通ずる解決策として有効です。必須科目Ⅰのみならず、選択科目Ⅲの論文にも応用できるため、しっかりとその内容を理解し、アウトプットする練習を積んでおきましょう。

おすすめの記事